俺とアーサーのなれそめばなし。

そんなわけで、鬼畜眼鏡伊太利亜のおまけにつけてたペーパーの伊英伊小話をのっけてみますよ。
「伊英伊？ないわー」という方はそのままお帰りくださいませ。
要素としては英伊に見える伊英伊とほんのり独仏(そうは見えない)。
英視点の話も書いてるけど上手く書けません。文才ってどこで買えますかorz

　アーサーのどこが好きか、って？
そうだよね、アーサーって見た目は可愛いけど、元ヤンだからケンカは強いし口は悪いし、変なところで真面目だから、俺は怒られてばっかりだよー。
でもね。それでも俺はアーサーが好きだよ。何でかって言うとね―――


　きっかけは、しばらく前の世界会議の時だよ。
あ、世界会議、と言っても会議そのものじゃなくて、会議の後なんだけど。
急ぎの仕事が無ければ仲の良い国同士で固まって、近くのバールに繰り出すのがお決まりの流れになってるんだ。
　その時はフランシス兄ちゃんとアントーニョ兄ちゃん、ギルベルトが呑みに行くかって話をしてて、ついでだからルートも誘われてたんだよね。
ルートもEUの発展のために親交を深めるぞ～とか言われて断れなくて、それなら他のEUの国も参加するべきだろう、って何だかんだで人数が増えちゃったんだ。まあ結局そんなのはただの口実で、みんなでバッカーノしてたんだけどね。
そうそうそれで、そこにアーサーもいたんだよ。
え？暴れてなかったのかって？――うん、アーサーの酒癖の悪さって有名だもんね。
でもアーサーって、別にお酒呑んだらすぐあんな風になるってわけじゃないんだよ。べろんべろんになった時にはまあ…困ったことになるけど、アーサーもそれを自覚してるから、呑みすぎないように自分でも気をつけてるみたい。元々そんなにお酒に弱い方でもないから、自制できてるうちは大丈夫。でもフランシス兄ちゃんとかギルベルトとかが焚き付けちゃったら、意地になって呑んじゃうんだよね…。
　その時も暴れそうになったけど、ギルベルトに首筋に手刀叩き込まれて気絶させられて(ギルベルトってすっごいね！思わずその場の皆で拍手しちゃった)、店の隅で机に突っ伏して寝ちゃってたんだ。それまで俺はみんなと一緒にいたんだけど、大人しいアーサーって珍しいなーって思って、興味本位で近寄ってみたの。
　起こさないようにそっと隣の椅子に座って、なんでこんなに眉毛だけ太いんだろうとか、意外と体細いのになんでケンカが強いんだろうなんて思って見てたら、寝言が聞こえたんだ。はっきりは聞き取れなかったけど…多分、アルフレッドの名前を呼んでたんだと思う。アルフレッドだけじゃなくて、ピーターや元英連邦の香――これも多分だけど、アーサーが『家族』だって思ってる国の名前を呼んでた。その時の顔が、寝顔なのにすっごく寂しそうだったんだよ。
　―――俺は、『イタリア』はずっと支配されるばっかりだったから、支配してきた側の気持ちって正直わからない。
でもアーサーは逆に、支配されて支配し返して、そして独立や返還で別れを繰り返してきたんだよね。何度も何度もそうやって傷付いて傷つけて、慣れてるから平気だって顔を普段はしてる。
けど、アーサーの本心はそれがすっごく寂しいんだ、って、その顔を見たらわかっちゃったんだ。
　だから慰めるつもりで、アーサーの頭を撫でちゃった。そしたらアーサー、目を覚ましちゃって。でも寝ぼけてるみたいで、ちょっとぼんやりした顔で俺のこと見てたよ。さっきの寝言もだけど、その瞳が潤んでたから、嫌な夢を見てたのかもしれない。
涙で濡れてたせいかな、アーサーの瞳が思ってたよりおっきくて、新緑みたいで綺麗だなって思ったのを覚えてる。……可愛いな、って思ったのも。
　だからつい、女の子を慰めるみたいに、大丈夫だからもう泣かないで、ってアーサーのほっぺたにキスしたんだ。
そんでアーサーの手を握ってあげたら、その手を握り返してまた寝ちゃった。
アーサーはその時、目の前にいるのが俺だとはわかってなかったと思うな。じゃなきゃあんな無防備な顔はしてくれないと思う。
　誰と思ったのかは気になるけど…でも俺は、それまで知らなかったアーサーを見れた事の方が嬉しくて、ニコニコしながらずっと寝顔を眺めてた。
　眠ったアーサーが手を離してくれなかったし、俺も離すなんて思いつかなかったから、後はお開きになるまでずっと二人でいたよ。
　様子を見に来たフランシス兄ちゃんに、丁度いいからホテルに送っていけって言われて寝呆け眼のアーサーと一緒にタクシーに押し込まれて、頑張って部屋まで送り届けたら、そのままアーサーに押し倒されちゃったけど。
　次の日の朝は大変だったよー！ルートなんて目じゃないくらい乱暴に叩き起こされて、据わった目で『これはどういうことだ』、なんて言われるんだもん。
どういうことなんて言われても、周りに散らばった二人分の服と、溜まってたモノを吐き出して妙にスッキリしてる体(俺はちょっと腰が痛いけど)、って状況からしたら、答えは一つしかないよね。だから見たまんまだよって言ったら、アーサーは頭を抱えて黙っちゃった。酔っ払って覚えてなかったみたい。
　ならちょうどいいと思って、今度は何かをぶつぶつ呟き始めたアーサーを抱き締めたら、アーサーは驚いたみたいだった。瞳をまんまるにして俺を見つめてくるから、にっこり笑って唇にキスをして、アーサーを好きになっちゃったから、俺の恋人になってくださいってお願いしたんだ。
一瞬何を言われたかわかんなかったみたいだったけど、頭に俺の告白が届いたら、途端に顔を真っ赤にして馬鹿って怒鳴られちゃった。ひどいよね、俺は真面目にお願いしたのに。
　そのまま服と一緒に部屋を追い出されて、どんなにドアを叩いても呼んでもアーサーは顔を見せてくれなくて、それからは会議とかでもとにかく無視されたり避けられたりで大変だったよー。
　それでも諦めない俺を、菊とルートはその根性を仕事に向けられないのか、とか言いながらも協力してくれて、ようやく、本当にようやく、恋人になれたんだ。


　……俺がアーサーを好きなのはね、意地っ張りで素直じゃないのに、本当は寂しがりやだから。(菊に言わせれば、これが「ツンデレ」なんだって)
俺も寂しいのは嫌いだから、いつも一緒にいたいんだ。そしたらアーサーも寂しくないでしょ？
アーサーが素直にそう言えないなら、俺がアーサーの分まで、愛してる、側にいたいって言ってハグすればいいんだもんね！
　え？嫌がってるんじゃないかって？アーサーがどう思ってるかなんて、見てればわかっちゃうよ。だってアーサー、本気で嫌ならすぐに拳が出るでしょ？
口では文句言いながら、俺を振り払わないのは、アーサーも俺と一緒にいたいって思ってくれてるんだよね。
　だから何度でも言うよ、”愛してる”って。
だってこれは、俺がアーサーにしてあげられる唯一の、だけどとっても大事なことなんだから！

(――――ごちそうさま！)